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RSウィルス感染症後編 |
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RSウィルスについて(後篇)
RSウィルス迅速診断がもしも陽性だったら、6ヶ月前の赤ちゃんは呼吸困難で入院する可能性があると覚悟しておいたほうがよいでしょう。特に夜間の呼吸の状態を厳重に観察し(夜間急変することが多いため)、ぜいぜいひどくなる、苦しくて眠れない、ウーウーいう、呼吸が止まるような気がする場合は、救急病院へ大至急受診して下さい。
しかしこのウィルスはありふれたウィルスで、特に珍しいものではありません。保育園でも毎年流行しています。保育園等に通園している赤ちゃんのお母さまは、園の流行情報には注意したほうが良いでしょう。
ただしRSウィルスに関心を持ち、迅速検査を行っている小児科は少数です。また、新聞やテレビもインフルエンザについては過剰なほど大きく取り上げますが、RSウィルス感染症についてはほとんど報道されません。そのため、患者がいても診断されないケースも多く、流行がわからない保育園もあるかもしれません
治療は、抗生剤は全く効果はありません。喘息に似たぜいぜいする症状には、気管支を広げる薬の服用や食塩水の吸入などを行います。細気管支炎、肺炎に進展してしまったら、入院して輸液、酸素投与、気道分泌物の除去などの治療が必要になります。
予防は、早産児や肺に病気のある未熟児、先天性心臓病の赤ちゃんには、抗RSウィルス抗体であるパリビズマブ(シナジス)という予防接種に似た筋肉注射が2002年から行われていますが、高価な薬のため、一般のお子さまには使用できません。
RSウィルス感染症は今のところ手の打ちようがない病気で、毎年多数の赤ちゃんが呼吸障害で小児科病棟に入院しています。
RSウイルス感染症という病気を知ること、ぜいぜいしたら小児科に受診し、先生とよく相談しながら、病気の経過をみること、特に夜間の呼吸困難に注意すること、RSウィルス感染症の流行期はあまり人ごみ(特に子どもが多く集まるところ)に出かけない、というぐらいしか、今のところ取りうる対策はないのが現状です。
(この項終わり)
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by 鈴木博 | トラックバック(0) | コメント(0) | |
RSウィルス感染症中編 |
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RSウィルスについて(中篇)
前編でお話しした通り、RSウイルス感染症はかかるとかなりぜいぜいし、入院まで至らなくても、夜間咳込みがひどい状態が1週間ぐらい続き、お子さまは大変苦しみます。最近では、病院から吸入器を貸し出して、自宅で吸入する例すらあるのです。
このようにRSウィルス感染症は、今は鼻水だけの症状でも、急激に悪化し、突然夜間呼吸困難になることもあるため、正確に診断する必要があります。現在RSウィルスは迅速診断キットを用いて鼻水から検査を行えば、容易に診断できるのです。(右写真)
ところが、この迅速検査は2歳未満の入院中の乳幼児の検査の場合しか、保険診療が認められていません。そのため、RSウィルス感染症の正確な診断が最も必要とされる小児科外来の現場では、コストを患者に請求するか(自費診療)、医療機関が自己負担する形でしか、検査を行うことができません。
しかし、RSウィルス感染症は上記のように正確な診断が絶対に必要です。そのため、今多くの小児科クリニックは検査費用をクリニックが負担して、検査を行っているのが現状です。
これはインフルエンザの迅速検査を、インフルエンザ脳症で入院した患者だけに認めるようなもので、医療機関にも患者にも(かかっている医療機関がRSウィルスの診断ができないかもしれない)大きな負担がかかります。
一刻も早く、インフルエンザより恐ろしいRSウィルスの迅速検査が保険適応になり、どこの病院でも普通の保険診療で、普通に検査ができる日が来ることが強く望まれます。
(この項続く)
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RSウィルス感染症前編 |
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RSウィルスについて(前篇)
赤ちゃんの病気で一番怖いのは、細菌性髄膜炎など稀な病気を除けば、RSウイルス感染症だと思います。RSウィルス感染症はインフルエンザの流行る前、10月から11月ごろ、ちょうど今頃、保育園などで流行します。実際、お子さまがRSで入院された方はいませんか。今の季節、RSウィルス感染症で、多くの赤ちゃんが入院しているのです。
RSウィルス感染症の潜伏期は3~5日で、咳からの飛沫感染や鼻水・痰に触った手からの経口感染で移ります。
RSウィルス感染症は大人から赤ちゃんまでかかります。症状はおとな(お母さま)だと鼻水、咳だけの軽いかぜ症状で終わることも多いのですが、年齢が下がるとだんだん症状は重くなり、赤ちゃんが感染すると呼吸困難になることもあります。
赤ちゃんがRSウィルスに感染すると、RSウィルスは赤ちゃんの気管支奥まで侵入し、一番肺の近くの細い気管支(細気管支)に炎症を起こします。そうすると、空気の通り道がふさがれ、赤ちゃんは呼吸ができなくなったり、かなり無理して呼吸をするようになり、ぜいぜいしてきます。呼吸をするたびにぜいぜい、ひいひい音がするようになり、高熱が出て、咳が止まらなくなり、夜寝られなくなります。これを細気管支炎と呼びます。
細気管支炎の典型的な経過は、まず鼻や咳などの通常のかぜ症状が2~3日続いた後、突然夜間ぜいぜいしだし、咳込みがひどくなり、陥没呼吸が出現し、呼吸困難に陥ります。酸素投与が必要で、すぐに夜間救急病院に急がなければなりません。入院して治療することになります。
ぜいぜい、激しい咳、苦しい呼吸は発病後1~3日間が最もひどく、この時期を過ぎれば軽快していきます。ただ、ぜいぜいや咳込みは7日ぐらい続くことも多いです。
このRSウィルス感染にはお母さまの免疫は役に立たず、新生児でも感染して発病してしまいます。新生児では呼吸が止まってしまうことがあり(無呼吸発作)、人工呼吸が必要になるケースもあります。
赤ちゃんがかかるのは、保育園の部屋で移るケースのほか(流行を防ぐのは困難で、大体毎年保育園で流行します)、軽いRSウィルス感染を起こしている兄弟から移る例が多いようです。RSウィルス陽性と診断されたお子さまは、小さな赤ちゃん(特に新生児)に絶対近づいてはなりません。
(この項続く)
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インフルエンザワクチンの季節になりました!(後篇) |
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インフルエンザワクチンについては、このブログでも幾度となく取り上げてきました。ご存知の方には繰り返しになるかもしれませんが、今外来でお母さま方からよく聞かれる、インフルエンザワクチンについてのご質問に、まとめてお答えしておきましょう。
●インフルエンザワクチンをうつとインフルエンザにかからない?
(お答え)
インフルエンザの症状を軽くすることは期待できますが、発病を完全に防ぐことはできません。
●インフルエンザワクチンをうてば、明日から効果が出る?
(お答え)
効果が出るのに2週間はかかります。1か月で十分な効果が期待できます。そのため、10月に1回、11月に1回接種しておけば、インフルエンザが流行る可能性が高い12月下旬に十分な抗体が作られていることになるのです。
でも、インフルエンザがもしも3月に流行るなら(2003年はそうでした)、1月下旬にワクチンをうっても間に合うことになります。インフルエンザの流行情報に注意しましょう。
また、お母さま方大人の方は1回接種でよいため、11月下旬ぐらいを目安にするとよいと思います。
●1歳前の赤ちゃんに接種するか、悩んでいます。
(お答え)
残念ながら、現在の接種量では効果はあまり期待できません。そのため、ご両親や兄弟がインフルエンザワクチンを積極的に受けて、抗体を高めて、赤ちゃんの感染の防波堤になるのがよいでしょう。ただし、1歳前の赤ちゃんに接種をしてはいけないということではありません。DPT、BCGやヒブ、プレベナー、ポリオのワクチンを優先して、もしも余裕があるなら、多少は効果が期待できるかもしれないので、接種を考えてもよいと思います。(あまりお勧めはしませんが)
(この項終わり)
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インフルエンザワクチンの季節になりました!(前篇) |
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さすがの猛暑も過去のものとなり、あっという間に秋が通り過ぎていくようですね。急に寒くなってきた、今日この頃です。
寒くなってくると、話題に上ってくるのがインフルエンザワクチンです。ちょうど昨年の今頃は、新型インフルエンザ流行のピークで、新型インフルエンザワクチンの接種が段階的に始まるし、インフルエンザの患者さんが外来にあふれて、病院中がパニックになっていたころでしたね。
今年はインフルエンザの流行はまだですが(香港では、A香港型が今大流行しているそうですが)、10月1日よりインフルエンザワクチン接種が「粛々と」(何かこの言葉の響きがうす暗くなってしまいましたね)始まりました。当クリニックでも、10月4日からワクチン接種を始めました。
そこで今回は、今年のインフルエンザワクチンについてお話したいと思います。
今年のインフルエンザワクチンはA型の香港型、新型とB型の3種が混じった混合ワクチンです。昨年まではAソ連型が入っていましたが、新型インフルエンザにとって代わられてあまり流行らなくなったため、新型と交代にワクチン内容から外されました。したがって、今年のワクチンは香港型インフルエンザ、新型インフルエンザ、B型インフルエンザに効果が期待できます。もちろん、去年のように新型インフルエンザワクチンを別に打つ必要はありません。また、高病原性とりインフルエンザには効果はありません。
今年のインフルエンザワクチンには新型インフルエンザの株が入っているため、新型インフルエンザ接種事業として、今年も国の統制下で行われることになりました。1~12歳のお子さまには、インフルエンザワクチン接種時に補助が出ることになりました。
1~12歳の接種希望者の保護者は医療機関の窓口で1回目、2回目ともに1500円支払います。本当は1回目3600円、2回目は同一医療機関なら2550円、別の医療機関で受ける場合は3600円かかりますが、残りの金額は地方自治体が補助してくれます。ただし、指定の予防接種票(予診票)への記載が必要です。
他の年齢の人は上記金額がかかります。(お年寄り以外は補助はありません。1歳前の赤ちゃんも効果が乏しいという理由で補助から、外されてしまいました)
また、国と契約していない医療機関で接種を受ける場合は、公費の補助を受けることができないため、お子さまは1回目3600円、2回目2550円(同一病院)が必要です。
ただし、これは東京都の場合なので、東京以外にお住まいの方は、接種前に直接医療機関に確認するか、お住まいの自治体の広報で接種料金を確認しておくことをお勧めします。
(この項続く)
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講演会のお知らせ |
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今年も、恒例の「母と子どもの講演会」を9月11日(土)に行います。今年は演題を1題にしぼり、私の方から新しい日本のワクチンと、日本の子どもはできない、そして世界の子どもが受けているワクチンにはどんなものがあるか、日本でも接種できる日は来るのか、などのお話をいたします。
ご興味のある方で、お近くの方はぜひご夫婦、お友達といらしてください。ご案内いたします。お子さま連れも歓迎いたします。
(詳しくは鈴の木こどもクリニックホームページをご覧下さい)
第13回 鈴の木こどもクリニック-母と子どもの講演会のご案内
講演 日本のワクチン、世界のワクチン
鈴の木こどもクリニック長・小児科医
鈴木 博
日時 2010年9月11日(土)3:00PM~4:15PM
場所 荏原保健センター(旧品川区保健所)
2階多目的室
費用 無料
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ヒブワクチンがふつうに打てることになります |
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ヒブワクチンは従来から輸入量が少なく、ワクチン希望者は医療機関からワクチン会社に登録し、ワクチンが医療機関に送られてくるのを待たなければなりませんでした。
(ヒブワクチンについてはこちらをご参照ください)
それが今年の10月から、国内で賄えるだけのワクチンが輸入できるめどが立ったため、10月以降はどこの医療機関でもほかのワクチン同様、普通に予約し、自由に接種できることになるようです。
DPTと合わせて接種を考えてもよいし、肺炎球菌ワクチンと同時接種も可能です。あとは定期接種化が課題です。
サーバリックスが定期接種に向けて、公的補助が強化される状況のようですが、ぜひ赤ちゃんの髄膜炎を防ぐ、ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン(プレベナー)も、一刻も早く定期接種として認められるよう、みんなで一層声をあげていきたいものですね。
この項終わり。
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手足口病 |
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マスコミで報道されているのでご存知の方もいらっしゃると思いますが、今日本では手足口病が大流行しています。(→夏かぜの季節②手足口病)
簡単におさらいすると、手足口病は口の中にぽつぽつと赤い斑点と白い潰瘍(アフタ)ができ、手足にも周りが赤い水疱が点在するようになります。あまり高くない熱が2~3日続き(熱が出ないお子さまもいます)、口が痛くてお食事や水分がとれなくなる、やっかいな夏かぜです。
ただ、手足口病自身は3~7日で自然と症状がよくなる、それほど重くはない病気ですが、まれに髄膜炎を合併します。髄膜炎は、脳を被う膜が炎症を起こすこわい病気です。高熱が出る、頭を痛そうにする、吐く、という症状がみられる場合は、髄膜炎の可能性があります。この場合はいそいで病院を受診した方がよいでしょう。
手足口病はいくつかのウイルスが原因で起こりますが、コクサッキーA10、A16、エンテロ71という3つが主な病原ウイルスと言われています。今年流行っている手足口病は、このなかで髄膜炎を起こしやすいといわれるエンテロ71というウイルスです。そのため、お子さまの髄膜炎を疑わせる症状にはよく注意してくださいね。
(じっさい髄膜炎を起こすお子さまは少ないのですが。)
この項終わり。
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変な色のうんちが出た! |
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前回は変な色のおしっこについて、お話ししました。今回は、その続編として、変な色のうんちについてお話しましょう。ただ、今回の話題は、食事時は避けることをお勧めしておきます。
赤ちゃんのおむつを替えていると、緑色のうんちが出ていて、ビックリされたことはありませんか。でも、緑色のうんちは黄色いうんちの色素(ビリルビン)が変化して、緑色に見えるだけなので、心配はいりません。
一般に、黄色、茶色、緑色のうんちは正常です。いろいろな条件下で、うんちの色調が少し変化しただけなのだと考えてください。
それに対し、赤色、黒色、白色のうんちは異常です。(写真は白いうんちの例)
赤いうんちは血便です。多いのは細菌性腸炎、つまり食中毒です。病原性大腸菌、カンピロバクター、サルモネラ腸炎は高率に血便を起こします。また、赤ちゃんの緊急を要するこわい病気の腸重積は、腸の中に腸がはまり込んでしまう病気ですが、やはり血便を伴い、赤ちゃんはおなかが痛くて大泣きします。間欠的に狂ったように大泣きし、ピタッと泣き止み、この繰り返しがだんだん短くなる場合は腸重積の可能性があります。浣腸すると血便が出るのが特徴で、腸重積の疑いがあるときは急いで病院を受診しましょう。
黒いうんちは血が時間とともに暗赤色に変化した、古い血便のことがあります。
白いうんちは、ロタウイルス、ノロウイルスなどの冬季乳児下痢症のときに、腸の中でうんちの材料にビリルビンの添加が間に合わず消化不良のうんちが白いままで出てきたものです。また、肝臓や胆嚢などが悪い時は、やはりうんちにビリルビンを排泄できないので、白いうんちになります。
赤、黒、白のうんちには、十分注意してくださいね。
この項終わり。
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変な色のおしっこが出た! |
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赤ちゃんのおむつを替えていると、赤い色のおしっこがおむつにべっとりついていて、ビックリされたことはありませんか。
「おしっこの色が変!」「血尿かしら?」お母さまもあわててしまいますね。実際、小児科に受診された方もいらっしゃるでしょう。でもそのほとんどは心配ないケースなのです。
おむつに着いた赤いおしっこは、ほとんどは「結晶尿」といわれるものです。実際の写真をいくつかお示ししましょう。(写真)
このおしっこの色は、尿中の結晶成分の色なのです。結晶成分とは、おしっこに含まれる尿酸とかシュウ酸という成分が、固まって析出して小さな粒になったものです。特に尿酸は小さな赤ちゃんの場合、急激に身体が発育しているため、新陳代謝の結果大量に尿中に捨てられているのです。これが、暑くて沢山汗をかいたり、飲んだおっぱいの量が少なかったりすると、尿が濃縮し析出してくるのです。これがオレンジ色やピンクの色に見えるのですね。したがって、これは血尿でなく、心配はいりません。一般にあざやかなピンクやオレンジ色のおしっこは結晶尿のことがほとんどです。
本当の心配な血尿の色は、どす黒い赤からさらに黒い色です。へモグロビンは時間がたつと酸化されて黒く変色していきます。赤黒い色から、赤ワインの色、コーラ色などは本当の血尿の可能性があります。この場合は、腎臓や膀胱、その他の重い病気の症状の可能性があるため、すぐおしめを持って、小児科を受診した方がよいでしょう。
この項終わり。
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